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本のレビュー(ジャンル:小説)エミール・ゾラ『居酒屋』新潮文庫刊、古賀照一訳
作成者: mokusei publishers(@mokusei222)
- この小説を読むと、十九世紀のパリの人々の日常に一気に引き込まれます。翻訳家・古賀照一氏の日本語の語彙がものすごく豊かで的確です。
- 季節の移り変わり、洗濯場の様子、ブランデー漬けのプラムやぶどう酒、マカロニ入りのポタージュ、子羊のブランケットや鵞鳥の焼肉、コーヒーの香りといったものの様子が目の前に浮かびます。鮮やかです。
- 物語では、主人公の女性・ジェルヴェーズを始めとする登場人物が、酒・金・欲望・まやかし・噂話・騒音に翻弄されて崩壊していきます。アル中、虐待、”パパ活”、詐欺、心身の崩壊などなど、今もよく聞くような......というエピソードが多く、何度もゾッとします。
- 150年以上も前のフランス第二帝政時代のパリ——つまり19世紀フランスで、「自由」「平等」「博愛」という現代に通じるたいせつな価値観が育まれ、経済・政治システムとしては資本主義が爛熟していったと言われています。社会が成熟するなか、『居酒屋』の時代に生きる人間たちのどうしようもなさに、なんとも言えないリアリティーを感じます。これって、「成熟しきった社会の」我々のことじゃないか!と思うエピソードが頻出しますよ。良くも悪くも!
- というわけで、小説のたくさんの場面が現代の私たちに似ていて、特にここしばらくのままならない社会と人のありようを——つらい場面もありますがそれも含めて——考えることのできる作品だと思います。
- さてゾラが全20巻で構成した大作《ルーゴン=マッカール叢書》の第7巻がこの『居酒屋』です。
- これから、『居酒屋』の続編のうちのひとつとして同叢書におさめられている『ジェルミナール』(岩波文庫)にもチャレンジしたいと思います。『居酒屋』よりは少し、希望のある物語のように思えます。ゾラの葬儀では、人々が「ジェルミナール!」といって棺を送り出したそうです。それほど、何か胸に残るものがある小説なのだということなのだと思います。
- 『居酒屋』もボリュームが多いですが、『ジェルミナール』は上中下3巻あり、読み終えるには『居酒屋』よりもさらに時間とパワーが必要そうです。そんな読書をしている人はあまりいないかもしれません。でもだからこそ、なかなか体験できない、あまり人が見たことのない世界へいけるということなのだと思っております。実際どうでしょうか。読書の秋、皆さんの感想もぜひ聞かせてください!
作成日: 2022年11月11日 更新日: 2022年11月11日